
学資保険のメリット・デメリットについて考える
1.子どものための保険
子供に必要な備えとは?
生まれたばかりの我が子に、何か準備しなければ、という思いを抱くのは、親としてはごく自然な感情です。
では、何を備えてあげればいいのでしょうか?まっさきに思いつくのが、「教育資金」と「けがや病気への備え」ではないでしょうか。
貯蓄と保障
「教育資金」は言い換えれば「貯蓄」です。一方で「けがや病気への備え」は「保障」と言えます。ここでは、それぞれを保険の活用で備えた場合のメリット・デメリットを比較してみていきます。
2.貯蓄重視の場合
貯蓄型の必要性
主に教育資金として貯蓄を考える方が多いと思いますが、貯蓄は本当に必要でしょうか?答えは「はい」です。
公立 | 私立 |
---|---|
230,100円 | 487,427円 |
小学校 | 中学校 | 高校 | |||
---|---|---|---|---|---|
公立 | 私立 | 公立 | 私立 | 公立 | 私立 |
305,807円 | 1,422,357円 | 450,340円 | 1,295,156円 | 386,439円 | 966,816円 |
単位:円
入学料 | 授業料 | 施設 設備費 |
実験 実習料 |
その他 | 総計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
私立 文科系 |
246,749 | 742,478 | 160,019 | 10,430 | 64,286 | 約122.4万円 |
私立 理科系 |
265,595 | 1,043,212 | 187,236 | 67,397 | 68,462 | 約163.2万円 |
国立 | 282,000 | 535,800 | ― | ― | ― | 約81.8万円 |
私立 短大 |
246,988 | 696,332 | 175,588 | 44,909 | 99,111 | 約126.3万円 |
上の表を見ていただくと分かる通り、義務教育の小・中学校を公立に通わせてとしても、
年間 | 計算式 |
---|---|
小学校6年間 | 305,807円×6年間=1,834,842円 |
中学校3年間 | 450,340円×3年間=1,351,020円 |
合計 | 3,185,862円 |
が必要になります。
ここに、幼稚園・高校・大学への進学や私立などの選択肢が増えていくわけです。すべて私立、大学まで進学した場合、
年間 | 計算式 |
---|---|
幼稚園3年間 | 487,427円×3年間=1,462,281円 |
小学校6年間 | 1,422,357円×6年間=8,534,142円 |
中学校3年間 | 1,295,156円×3年間=3,885,468円 |
高校3年間 | 966,816円×3年間=2,900,448円 |
大学(理系)4年間 | 1,837,315円 |
合計 | 18,619,654円 |
約1900万円が必要になりますね。現在あなたに余剰金としてこの金額があり、教育資金以外に使い道がない、というのであれば、貯蓄性の高い商品を検討する必要性はあまり感じないかもしれません。
しかし、この金額を遊ばせている家庭はそう多くありません。
私自身、こんな大金がポンと用意できるはずもなく、子供が生まれる前から、貯蓄型の学資保険を検討しました。
貯蓄型保険のメリット
貯蓄を目的とした保険の魅力は、何と言っても返戻率がよいことです。
返戻率(%)= 受取総額(一時金・祝金・満期金)÷ 払込保険料総額 × 100
払い込み方法や満期金の受け取り方によって、返戻率は変わってきますが、実際の商品をいくつか見てみましょう。
平成28年2月17日現在
アフラック | 夢見るこどもの学資保険![]() |
18歳満期18歳払済み 受取は15歳時50万円、18歳時100万円、19歳時50万円、20歳時50万円、21歳時50万円の計5回。払込免除特則付き。 |
月額保険料:13,190円 |
総払込額:2,849,040円 | |
合計受取金額:3,000,000円 | |
返戻率:105.2% | |
18歳満期10歳払済み 受取は15歳時50万円、18歳時100万円、19歳時50万円、20歳時50万円、21歳時50万円の計5回。払込免除特則付き。 |
月額保険料:22,560円 |
総払込額:2,707,200円 | |
合計受取金額:3,000,000円 | |
返戻率:110.8% |
かんぽ生命 | はじめのかんぽ![]() |
18歳満期18歳払済み 一時金なし。払込免除特則付き。 |
月額保険料:13,380円 |
総払込額:2,890,000円 | |
合計受取金額:3,000,000円 | |
返戻率:103.8% | |
18歳満期12歳払済み 一時金なし。払込免除特則付き。 |
月額保険料:19,080円 |
総払込額:2,750,000円 | |
合計受取金額:3,000,000円 | |
返戻率:109.1% |
ソニー生命 | 学資保険スクエア![]() |
17歳満期17歳払済み 一時金なし。払込免除特則付き。 |
月額保険料:13,830円 |
総払込額:2,821,320円 | |
合計受取金額:3,000,000円 | |
返戻率:106.3% | |
17歳満期10歳払済み 一時金なし。払込免除特則付き。 |
月額保険料:22,620円 |
総払込額:2,714,400円 | |
合計受取金額:3,000,000円 | |
返戻率:110.5% |
貯蓄重視の学資保険商品のほとんどが、返戻率100%を超えています。
学資保険は契約者にとって、返戻率が高く、さらにその多くに払込免除特則(契約者が死亡あるいは一定の高度障害状態になった場合、以降の保険料の払い込みが免除となる特約)が付帯しているとても有利な商品です。
逆に、保険会社からすると、損が大きい商品でもあります。この商品を存続させるためには、会社内の別の商品で収支のバランスをとらなければなりません。
そのため、学資保険以外は返戻率が低く掛け捨てばかりなのに、学資保険はお得感がある、とか、逆に、学資保険以外は保険料が安いのに、学資保険の返戻率が他社と比べて悪い、などという声が上がるのです。
貯蓄型保険のデメリット
満期金を期待する商品の多くは、一時金・祝金・満期金を受取れる時期が商品ごとに決まっています。つまり、急に必要になった時、自由に引き出すことができない点です。
万が一、予定外の資金が急に必要になり、学資保険の解約返戻金を充てようとしても、その額は払い込んだ保険料より大幅に少なくなる可能性が高くなります。
よって、教育資金の準備は全額を満期金に頼るのではなく、一時金や祝金を活用し、必要な時に必要な額を確保できるよう、加入時にしっかり計画することが大切です。
とはいえ、必要な教育費の額や、保険料に支出できる経済力は、個人によって差があります。保険・金融のプロであるFPに相談するのも良い方法ではないでしょうか。
3.保障重視の場合
保障型保険の必要性
「子供はしょっちゅう転んだりして、ケガが付きものなんだから。」
私が親になる際、母に言われた言葉です。それは確かに間違いないと思います。では、子どもに医療保障は必要でしょうか?
私自身、親になってみて初めて知ったことですが、現在は子供の医療費は、社会保障の一環でほぼ「無料」であることが多いようです。(自治体によって程度は異なります。)
けれど、子ども一人で入院・通院はできません。親が付き添う場合、その間仕事を休まなければなりません。
親の収入を補てんするという意味では、保障型保険は有効という側面を持ちます。
また、年齢が若く、健康状態が優良であれば、終身保険の保険料が格安で済みます。
幼少期の保障目的ではなく、成人してからの保障を安い保険料で済ませる目的であれば、一考の価値があると言えます。
実際に、終身医療保険で比較してみました。
オリックス生命 | 医療保険新キュア![]() |
0歳加入。 保障期間・保険料払込期間:終身。 入院保障日額5,000円。 先進医療特約付き。 |
月額保険料:1,032円 |
60歳までの払込額:743,040円 | |
80歳までの払込額:990,720円 | |
90歳までの払込額:1,114,560円 | |
30歳加入。 保障期間・保険料払込期間:終身。 先進医療特約付き。 先進医療特約付き。 |
月額保険料:1,582円 |
60歳までの払込額:569,520円 | |
80歳までの払込額:949,200円 | |
90歳までの払込額:1,139,040円 | |
40歳加入。 保障期間・保険料払込期間:終身。 入院保障日額5,000円。 先進医療特約付き。 |
月額保険料:2,187円 |
60歳までの払込額:524,880円 | |
80歳までの払込額:1,049,760円 | |
90歳までの払込額:1,312,200円 | |
0歳加入。 保障期間:終身。保険料払込期間:65歳まで。 入院保障日額5,000円。 先進医療特約付き。 |
月額保険料:1,105円 |
65歳までの払込額:861,900円 | |
30歳加入。 保障期間:終身。保険料払込期間:65歳まで。 入院保障日額5,000円。 先進医療特約付き。 |
月額保険料:2,022円 |
65歳までの払込額:849,240円 | |
40歳加入。 保障期間:終身。保険料払込期間:65歳まで。 入院保障日額5,000円。 先進医療特約付き。 |
月額保険料:3,171円 |
65歳までの払込額:951,300円 |
JA共済 | 医療共済![]() |
6歳加入。 保障期間:終身。保険料払込期間:80歳まで。 入院保障日額10,000円(~5歳は5,000円)。 先進医療特約付き。 |
月額保険料:6,781円 |
80歳までの払込額:6,021,528円 | |
30歳加入。 保障期間:終身。保険料払込期間:80歳まで。 入院保障日額10,000円。 先進医療特約付き。 |
月額保険料:10,814円 |
80歳までの払込額:6,488,400円 | |
40歳加入。 保障期間:終身。保険料払込期間:80歳まで。 入院保障日額10,000円。 先進医療特約付き。 |
月額保険料:14,075円 |
80歳までの払込額:6,756,000円 |
結論としては、
- 子どもの純粋な医療費としては不要
- 付き添う親の休業補償という面では有効
- 終身保険など、将来にわたっての保険料を抑える目的であれば、早期の加入は有効です。
保障型保険のメリット
上記で述べたとおり、親の休業補償・将来の保険料を見越して、というメリットがあります。
保障型保険のデメリット
ここでは、学資保険に医療保障や死亡保障が付帯しているものとして考えます。付帯しているものと付帯していないもの、実際の商品で比較してみましょう。
平成28年2月17日現在
JA共済 | JAのこども共済すてっぷ![]() |
|
22歳満期18歳払済み | ||
医療保障なし | 18歳40万円、19歳40万円、20歳40万円、21歳40万円、22歳40万円の計5回。 払込免除特則付き。死亡保障200万円。 |
月額保険料:8,508円 |
総払込額:1,837,728円 | ||
合計受取金額:2,000,000円 | ||
返戻率:108.8% | ||
医療保障あり | 18歳40万円、19歳40万円、20歳40万円、21歳40万円、22歳40万円の計5回。 払込免除特則付き。死亡保障200万円。 入院日額5,000円。先進医療保障あり(技術料額)。がん特約あり。 |
月額保険料:11,358円 |
総払込額:2,453,328円 | ||
合計受取金額:2,000,000円 | ||
返戻率:81.5% |
上記のとおり、返戻率が格段に落ちます。
また、学資保険に付帯した医療保障は、学資保険の保障期間終了とともに保障が切れます。
つまり、医療保障が学資保険の特約の立場であると、将来の保険料を安くするために早くに加入するという意味がなくなってしまうのです。
もう一つ、ここで付帯されている死亡保障について、注意しなければなりません。
この死亡保障は、被保険者、つまり、子どもがなくなった際に給付されるものであり、契約者(親)の死亡時に給付されるものではありません。
子どもが複数人いる家庭では、きょうだいの教育費として活用することもあり得ますが、一人っ子の場合、子の死亡によって給付された給付金は、契約者に返るだけです。
不必要に死亡保障を厚くして保険料を高くしてしまうのは、勿体ないプランだと言えるでしょう。
4.貯蓄と保障は分けて考える
貯蓄型保険の活用
先に述べたとおり、教育費は必ず必要になります。そのために返戻率の高い学資保険を利用することは、非常に賢い方法です。
貯蓄型保険は、節税の観点からもおすすめと言えます。
学資保険の一時金や満期金、受け取り時に税金がかかるかどうか、調べてみました。
学資保険の一時金・満期金は所得税区分上、一時所得になります。クイズの懸賞金や、競輪・競馬などの払戻金と同じ扱いで、課税所得は次の式で求めます。
課税所得=(収入金額-必要経費-特別控除50万円)×1/2
これを、実際の学資保険のケースに照らし合わせてみます。
15歳時に100万円の一時金を受け取った場合は、
100万円-216万円-特別控除50万円)×1/2=-141万円
マイナスになってしまいました。この場合は、課税されません。
では、満期金200万円の支払いがあったときは、どうなるでしょうか。
このときは、支払った保険料から、すでに一時金として受け取った100万円を差し引いて計算します。
(200万円-(259.2万円-100万円)-特別控除50万円)×1/2=-4.6万円
やはりマイナスになってしまいました。課税されません。
つまり、一時金・満期金を受け取る際の課税は計算式上ありますが、実質は0円なのです。
それだけでなく、掛金が生命保険料控除の対象になりますので、二重の節税となります。
定期預金などはマル優制度利用者を除き、利息には課税がありますので(利子所得)、節税という意味ではどちらがお得か一目瞭然ですね。
ゼロ金利政策が導入され、各金融機関の金利も下落傾向にある現在、教育資金に限らず、あらゆる準備資金は、少しでも元本が増えるよう、積立定期預金などの貯金以外の選択肢も検討しなければいけません。
また、金融機関の金利は、インターネットでの表示と店頭表示にタイムラグが生じる場合があり、個人で比較するのは至難の業です。
最新の金利の情報や、保険商品の返戻率を比較するなら、総合保険相談窓口がおすすめです。金融のプロであるFPが、あなたにとってベストな貯蓄の方法を探してくれますよ。
保障型保険の活用
生まれたばかりの赤ちゃんを前にすると、あまりピンと来ないかもしれませんが、小学校高学年になり部活動を始めると、骨折など大きなけがを負うことも予想しなければなりません。
中学・高校に進学して、自転車通学になれば、交通事故の可能性もぐんと上がります。
その時その時のリスクを踏まえて、保障の厚さを変えられる保険を活用することが賢い方法と言えるのではないでしょうか。
5. さいごに
あくまで子どものための備えですから、子どもが大人になるまでのライフプランを考えてあげることが大切です。
それと同時に、親であるあなたのライフプランも見直す必要があるかもしれません。
家庭によって貯蓄・保障の大きさは違ってくるかもしれませんので、専門家と一緒にしっかり将来について話し合うのもいいかもしれませんね。